木喰仏


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ブック
開発者 Tohoshuppan Inc.
11.99 USD

刊行にあたり

木喰は日本廻国の旅の中で、山村の民のために仏を彫った聖である。
その旅は五十六歳から始まって、九十三歳で没するまで続いた。仏を彫
り始めたのは六十一歳からで、八十歳を過ぎるころから代表作を次々に
彫り出している。しかも五穀と塩を食さぬ木喰戒を守りながらの徳行で
ある。現代人には想像もつかないような、超人的な生涯であった。
信仰が失われつつある現代において、長い老後に生き甲斐を見出すこ
とは難しい。還暦を過ぎてから仏像を彫り始め、九十歳にして千体の造
仏を達成した木喰の生き方に学ぶことは、心の豊かさを取り戻すことに
つながるに違いない。
木喰の足跡は北海道から九州まで全国に及んでいる。しかも木喰は、
仏像を山深い集落の小さな堂宇に好んで彫り遺した。それらを訪ねて廻
るには、相当の時間と体力が必要である。まして重い撮影機材を持って
となると、その撮影行は、もちろん木喰の労苦には及ばないにしても、か
なりの困難を覚悟しなければならない。これまで本格的な写真集が待望
されながら実現が難しかったのは、そのような理由による。
本書は、ベテラン美術カメラマン寺島郁雄氏が卓越したライティング
技術で撮影した木喰仏八十体余りを、オールカラーで掲載する。一人の
カメラマンによって撮影された木喰仏の写真集は、おそらく今回が最初
にして最後となるだろう。研究者はもとより、愛好家必携の木喰仏写真
集の決定版である。